夜明け前 



愛という形を知っていますか?


そもそも形なんてものがないから名前というものが必要になるのだろう。それを明確なものとしてとどめておきたいから、口に発することで、文字にすることで、存在として認めたいのか、他人にぶつけたいのか。
目には見えない。そこにあると言われてもちっともわからない不確かなもの。形にしてくれなきゃ、目に見えるようにしてくれないとわからない
消えたのかまだあるのかさえわからないままで、一体何を信じていくのだろう。
名前のあるものでさえ透明なのに該当しないものは一体に何になるんだろう

友情?恋?はたまた錯覚でしたとか。 今のところどれにも該当しない僕の中にある気持ち。 名前のないものに意味なんてあるんだろうかと考えてしまうこと自体に本当は意味がないんだと思う。

だから形や名前を考えた時間も彼の側にいると不確かな気持ちに振り回された日々も 自分の中に名無しの気持ちが存在していたことさえもきっと、いつか消えていく。




僕を呼ぶ2人の声が聞こえる。家より少し離れたところにある緑の色が深くて濃いきれいな木によりかかって考え事をしていたらいつの間にか寝てしまっていた。木の葉からもれる光と周囲の色がかわっていたことで自分がどれだけ眠っていたのかやっと気づいた
「おーいアイスーもうすぐ夕ご飯だよー」
「もうすぐ飯ができるがら帰って来い」
眠い目をこすりながら声のする方に向かおうと立ち上がった。 とてもとても大事で大好きで大切な人たち。家族。兄弟。その元へ。
「わかってるよー大きな声で呼ばないでくれるかなー恥ずかしいったらないよ」
文句を言いながら二人の声のする方へ歩き出すと律儀に2人とも僕の声が届く距離まできちんと来ていた
「早くしねえど全部食っちまうぞ」
大きな背中をしていつも見上げてばかりいる存在は夕日の光を浴びていつもに増して輝いてみえた。悔しいけれどなんだかんだでデンマークはかっこいい。そう思ってることは絶対に言わないけれど。
「あんこ全部食ったきや明日飯抜きだし。だから気さしのぐていい」
「ちっと待てよノル!!!冗談だって」
そういいながらノルは僕の肩を引き寄せて隣で騒ぐデンマークにウザイと放っている。 その横顔は夕日のせいか優しく温かいノルの雰囲気をより魅力的にみせていた。
「好きなだけ食えばいいだろ」
僕が面倒くさそうに言うと その言葉を聞いてにんまりと笑うデンマーク、まったくどんだけ食うんだと呆れてグーをデンマークの頬にねじりこむノル。 口には出さないけれど、ノルはデンマークのことを殴ったり、けなしたりするけれどそこには愛おしさみたいなものが見え隠れしたりして、裏に潜んでる時もあることを僕は知っている。 形が変わりそうで変わらないこの2人の空気、本当は変わっているのだけど僕が知らないだけなんだろうか。どっちにしても僕にとって2人とも大事なことには変わりはない
「さぁ飯だ飯だ!!!」
「もう勝手さしろ・・・・」
はしゃぐ背中に少し下に傾く頭。
なんだかその構図が妙におかしくて思わず立ち止まって笑っていた。あぁ幸せだと感じた刹那、ぶわっと強い追い風をうけて、とても立ってはいられず膝が折れて倒れそうになった
「あっ!」
思わず何かにすがりたくて手を伸ばしていたことに数秒後激しく後悔することになる

「おい大丈夫か?怪我とかねえが?」
「・・・・うん・・・もう離せって暑苦しいっ」
デンマークの強くて長い腕に引かれて、自分は抱きしめられる格好になってしまっていたことにほんのわずか気づかなくて、慌てて引き離した。
「本当か?」
お礼を言うどころか、きつくて愛想のない返事をしたことに彼は一切何も言わず、僕の顔をのぞき込むように見て眉が寄った顔で心配してくる
「大丈夫だって言ってんだろう。まったくウザいんだよ何回も言わせるな」
「なれえい」
そう言ってやっとその腕から僕を解放してくれた。 すごく悪いことをしたような気分になったけれど、それよりも感じたことのない温度と声の距離をどうしていいのかわからずあわあわと変な行動をとってしまわないように自制することで精一杯だった

「アイスー危ながって本当」
いつの間にか目の前にいたノルがこちらも心配そうに眉をよせて僕を見ている。2人は僕を小さい子供か何かと勘違いはしてはいないだろうかと思うほど心配性なところがある
「ホント大丈夫だからご飯冷めるとうるさいよアイツ」
少し離れたデンマークに聞こえない大きさの声で僕はノルに行くように促した。それを聞いて信じてないわけではないけれど、そうしておいた方がいいだろうと思ってくれたのだろう、ノルは重い腰を上げてデンマークと先に 家へ入っていった。

「はぁぁぁ・・なんだよ・・・・」
盛大なため息をついて、へなへなと力が抜けて地面に座り込んでいた。早くなる鼓動を落ち着かせようと胸に手を当ててみたけれど掌から早さが伝わって余計に混乱し、あたふたして落ち着くどころではなかった。
「なんか僕おかしくないかな・・・・・」


頭を抱えて自分の中に芽生えたものの答えを必死に探したけれど名前がついていないそれに答えなど見つかるはずもなかった














序章とでもいうのか、本当のスタートはこれからになるんですけど、 結局SSじゃなくなってるんですよ・・・北欧に関しては。ここで全て消化してやろうと考えてますから。よろしければ続きも読んでいただけると嬉しいです